話題の『アド・アストラ』を池袋レーザーIMAXで観てきました。これは感想が非常に難しい。 . 父の栄光と何事にも動じない強い心臓によってキャリアを積んできた主人公ロイ。しかし彼は家族を失い孤独の中で自分自身を保つことに葛藤していた。映画史上類を観ない、太陽系最端の海王星までのリアリティな宇宙探索がウリでありながら、このロイ演じるブラッド・ピットの表情の方が脳裏に刻まれる美しさ。言葉は少なく、虚無であるはずが、心の感情が滲み映し出される。IMAXスクリーンではそれがより鮮明に感じられました。 . ここからは解釈についての感想なので、鑑賞後に読むことをオススメします。 . . . まず我々はSF作品に多くの希望を抱きすぎている。それ故にこの映画は壮大にそれを裏切りましたね。でもここに込められたメッセージを僕はこう解釈しました。 . この物語のすべては、理想と現実の対峙。宇宙飛行士のロマンと惰性化。月面居住開拓の発展と戦争。生物実験の進化と過ち。未知なる生命探求の希望と絶望。未来も相変わらず秘密は隠蔽され続け、甘いセキュリティが崩壊を招く。足元を見れない人類は、映画が物語ってきたシナリオを、結果繰り返してしまう。生命は身の回りに常にあるのに、どうして愛することができないのか。 . ロイはそのことに父と再開することで気づくことができた。父に求める愛。常に受動的で承認欲求でここまでのキャリアと人生を構築してきた。家族を失っても父に認められるため。彼にとって父の生存は失った希望。意地でもすがり付き、辿り着いたにも関わらず、最後には彼は空っぽとなった。しかし自らの意思で帰還し、別れた妻との再開。ロイという男はようやく自らの愛で生きることを選んだ。これが本作のメッセージなのでしょう、きっと。男って不器用ですな、そこはよくわかります。 . しかしながら、少々現実離れした展開、観客の希望と乖離した進行、なかなか共感しづらい物語となってしまったのが残念なところ。『地球、最後の男』の方が同じテーマ性で共感する部分もあったし、半ば強引ながらも訴えるメッセージが観る側に理解を与えていたような気がしました。 . でも嫌いになれない。じわじわとぞわぞわと染み渡るような野心的なSFは大好物です。 . . 海王星、もっと観たかったなぁ。 . #映画 #映画感想 #映画鑑賞 #映画記録


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